『サスペリア』新旧

サスペリア』Suspiria(ダリオ・アルジェント Dario Argento)

GYAO!で。新しい方を見るために何年振りかで見たら、感動した。色!! こんなにすごかったっけ。『コックと泥棒、その妻と愛人』を初めて見た時のような興奮。既に話を知っているからか、血の色のせいか、怖いという感覚は無かった。血は、今作られる映画では大抵もっとどす黒いものになるものね。

 

サスペリア』Suspiria(ルカ・グァダニーノ Luca Guadagnino)

君の名前で僕を呼んで』しか見ていないものの、この監督はなんとなく合わない気がしていたし、映画館で見た予告からはダメそうな印象しか受けなくて、あまり期待して無かったからか、楽しめた。街や建物、雰囲気は良かった。

ただ、映画館がけっこう混んでいて両隣りに人が居て、片方の席の男が映画が始まってから肘掛に腕をのせてそれをかなりはみ出させてくるし、頭はもたれかかってきそうなくらいこちらへ傾けてくるから、「え、痴漢?」って気持ち悪くて、鞄を肘掛に押し付けて腕を押し返しつつ、もうずっと気になって気が散って、話がよく分からなかった。もう一度見た方が良いのかしら。万全の状態で見てもよく分からない映画かしら。シネコンで席が指定できるようになってから、ほぼ映画館での痴漢の事など考えたことが無かったのに。今後もし映画館で痴漢にあったら、ガープの母にならって対処したい。

最初の方で、田舎の家でいびきかいて寝ている女性がマルコスだと思っていた。この作品では学校と別の場所に隠されているのかと。だって、いびきかいてベッドで寝ているんだもの。おかげでかなり迷子になった。

ティルダ・スウィントンに複数の役を演じさせたり、意図的に見る側を混乱させている?映画を見る前にあまり情報を仕入れずに行くから、それを知らずに見たけれど、時々なんだか引っかかる事があって、家に帰って彼女が3人演じていた事を知った。

ダンスって、スピリチュアルな、何か別の次元のものとつながっているイメージなので、主人公のダンスが他の人への暴力と呼応するのは良かったけれど、なんだか途中から笑えてきた。発表会のダンスも、サバトの場面も、音楽が盛り上げていくし可笑しくなってきて笑いそうだった。この映画、全然怖くない。驚くくらいに。怖くする気が無かったのかも。別に怖くなくても全く構わない。オリジナルのバレエのダンサーははもちろん、ピナ・バウシュも細いのに、それに比べると、この映画は主人公も他のダンサーもわりと健康的なというのかそこまで細くなくて、それはまた迫力が出て面白かった。

「マザー」、「母」というものに対して過剰に意味付けしたり神秘性を持たせるのは、気持ち悪い。

きれいでいびつで、「変なものを見た」という満足はある。計算しつくしたとか色々な仕掛けがあるとか情報量が多い作品も面白いけど、計算が透けて感じられるものより、作り手の意図みたいなものを超えて異様ななんだかすごいものに化けてしまったようなものの方が好きだ。なので、この映画はあまり好きではない。

とんちんかんな、とんまなことを書いていたら、それは95%くらいは隣に座っていた人のせい。あんな人に隣に座られるより、たぶんひとりで見た方が良い。