『カモイクッキング』

『カモイクッキング』(鴨居羊子 ちくま文庫)を読み終えた。あたしのような知識も無く批判的な舌も持ち合わせていないただの食いしん坊を肯定していただけているようで嬉しい。酢漬けになったゴキブリの話にぎょっとし、解説を読んでほっとする。久しくお酒を飲んでいなかったのだけれど、読んでいたら無性にお酒が飲みたくなって、冷蔵庫に入れっ放しだった缶入りのジュースみたいなカクテルをあけた。お腹が空いてくる、それも人と一緒に美味しいものを共有したくなる文章。ウィーンのデメルというお菓子屋が出てきて、先週、自分へのご褒美に買って来たケーキがデメルのものだったことを思い出した。チョコレートとさくらんぼが贅沢に沢山飾られいるタルトレットで、うっとりとする愛らしさ。それまでは猫の舌のチョコレートしか知らず、生菓子もあるなんて思ってもいなかった。ウィーンもロシアも知らないくせに、なんだかちょっと懐かしさを感じた味だった気がする。
カモイクッキング―くらしと料理を10倍たのしむ (ちくま文庫)