『世界奇食大全』

『世界奇食大全』(杉岡幸徳 文春新書)を読み終えた。新書のボリュームで「大全」なんて、とても書ききれるような内容ではないでしょう、なんて思いつつ手に取ってみたものの、かなり楽しく読む。最近の組み合わせがおかしな食べ物だけでなく、伝統的なものや、他の国の人にとってはぎょっとするようなものでも、その国では普通に食されているものなどが紹介されているのが良い。ウサギは食べたことあるし、カンガルーは普通に食べてみたい。ベニテングダケも食べられるなら食べてみたい。「蚊の目玉のスープ」って、すっかり忘れていたけれど、子どもの頃に祖母や父から、そんなものがあるという話を聞かされた憶えがある。懐かしい。キビヤックは怖い。
それから、愛知県は盆踊りのときに荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」が大人気の曲で、老若男女が踊り狂うなんて知らなかった。久しく盆踊りなんて行っていないけれど、そんなの聞いたことがないわよー、と騒いでいたら、YouTubeに動画は上がっているし、友人から「愛知県尾張地方限定」と教えてもらった。実家に帰ったときに、妹らにも知っていたかと聞くと、やはり知らなかったそう。妹ソノ2が「え? あんなの無理じゃない? え? え? どうやって?」と真剣に悩み始めたのでどうしたのかと思ったら、ボニー・タイラーの「ヒーロー」だと思ったらしい。麻倉未稀がカヴァーしたやつ。確かにあれで盆踊りは無理かも。
サルミアッキというフィンランドのお菓子は、一部では「世界一まずい」飴と噂されているそう。この本にも、「強烈なアンモニア臭」で「酸っぱいゴム」みたいで「『このままなめ続けると人間でなくなるんじゃないか。別の世界にトリップしてしまうんじゃないか』という恐怖すら覚える味」だなんて書いてあり、著者も結局吐き出したそう。 この名まえに聞き覚えがあり、こんな黒々とした薬臭い摩訶不思議な味のグミのようなものを妹にもらって食べたことがあるような気がする。家族全員が美味しくないという中、妹ソノ1だけ、食べているとなんとなく美味しいようなクセになるような、といって結構普通に食べていた。実家に帰って確認すると、スイス人の知人にフィンランド土産でもらったサルミアッキは、まだあと数個残っていて、久しぶりにもらって口に入れてみると、開封後日が経ち過ぎてちょっと変質しているような気もしたものの、確かになんとなくアンモニアっぽいような、酸っぱいような塩っぱいような、血の味に近いような、快くはないけれど、そんな恐ろしい刺激もなく普通に噛みしめ味わって食べてしまった。たまに美味しくないのを確認するために食べてみたくなるような味。昔、アメリカでもらったリコリスの真っ赤なお菓子の方がよほど強烈に不味かった気がする。あの時はあれ以上口に入れていられなくて、出させてもらったけれど、今ならあれも食べられるかしらん。この本の著者が試食したのはFazer社のもの。妹が持っていたのはHalva社のもの。奇妙なものをさんざん試食された人がギブアップしたものを、軟弱なあたしが普通に食べられたとは考えにくいので、Halva社のSalmiakki kalaというお魚の形をしたサルミアッキは、Fazer社のものよりもたぶんマイルドで食べやすいのだと思う。 もう少し早くにこの本を読んでいて、知人がヘルシンキの空港に寄ると知っていたら、何か買ってきてもらったのに(ムーミングッズはいろいろもらった)。
Halva
http://www.halva.fi/
妹のもらったのは、ここのSalmiakki kalaという黒いお魚の形をしたもの
http://www.suomikauppa.fi/advanced_search_result.php?keywords=halva
世界奇食大全 (文春新書)