『眠れない一族』

『眠れない一族 食人の痕跡と殺人タンパクの謎』The Family That Couldn't Sleep : A Medical Mystery (ダニエル・T・マックス Daniel T. Max 柴田裕之・訳 紀伊国屋書店)を読み終えた。扇情的な副題と帯の文句のわりに、中身は至極真っ当で丁寧に書かれた、プリオン病についての本。おかげで「食人」というだけで興奮する「プリオン」という言葉すら知らなかった物知らずが手に取って面白くぞくぞくしながら読んだのだから、何が幸いするか分からないわね。とはいえ、ちょっとインチキくさい表紙が災いして、読んで欲しい人には手に取ってもらいにくいかも。もちろん狂牛病もすごく気になるものの、致死性家族性不眠症というのが怖い。ここ半年くらい自分でもイヤになるくらい眠っていて、もう何年も睡眠時間を削って遊んできたために、その分を取り戻そうとする肉体に自分が乗っ取られているような気すらしていたのだけれど、眠れるってすごく幸せなことのようだ。紹介されている「ヴァルデマー氏の症例の真相」『百年の孤独』も読みたい。ポオのは「ヴァルドマアル氏の病症の真相」という翻訳があるみたい。後者は既に手許に用意してあるのにねえ。
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎