『うまいもの・まずいもの』

『うまいもの・まずいもの』(赤瀬川原平東海林さだお奥本大三郎 中公文庫)、安原顯・編。1994年にメタローグから出たものの文庫化。米が買えないとかタイ米とかの話題が出ていて、ああ、あの頃ね、と。その頃とはかなり変わってしまっているところもあるので、今この3人を集めたらどんな話題をどう喋るかなどと考えてみるのも楽しい。奥本大三郎の「パンがなければ、カステラを食べる」って、良いわね。ブリオッシュって、マリー・アントワネットの時代はお菓子かもしれないけれど、いくら生地がリッチとはいえやはりパンとしか思えないから。
奥本大三郎

東海林さんって、いま、日本で一番文章のうまい人の一人だと思うんですよ。

純文学の作家の中にも、これぐらい文章に気を遣っている人が何人かいればいいと思うんですよ。たとえば食べものについての分析的な書き方、あのまじめな態度というのはすごいですからね。

とまでいう、東海林さだおの本が読んでみたくなった。

巻末の「番外編『京都人』が感じる『東京のまずいもの』」という甲斐美都里の文章の、海苔巻の話に笑った。最近、東京で海苔巻といえばかんぴょう巻のことだと教えられて驚き、だいたい、かんぴょうしか巻いてない寿司があることに驚いて「そんなビンボ臭い食べ物、知らない」と暴言を吐いて怒られたばかり。今思うと、カッパ巻の方が、コストも手間もかかっていないかしら。乾物好きなので、後日その「海苔巻(かんぴょう巻)」は美味しくいただいたのだけれど。カッパ巻とかかんぴょう巻って、イギリスのきゅうりだけのサンドウィッチに通じる、上品な食べ物かも。