『ジュリー&ジュリア』

ジュリー&ジュリア』JULIE & JULIA(監督:ノーラ・エフロン)を見に行った。年末に公開されたときに見逃してしまっていたのをやっと。そして、同タイトルの本は翻訳がでないかとずっと待っていたわりに、映画を見に行くときには、まだ読み終えていなくて行きと帰りの電車の中でも読んでいた。
映画は、ジュリー・パウエルの本とジュリア・チャイルドの本をうまくまとめているようで、ジュリー・パウエルの奮闘ぶりは本の方が楽しめるものの、映画は映画で楽しい。「サタデー・ナイト・ライブ」でダン・エイクロイドがジュリア・チャイルドのものまねをしていたということは聞いていたか読んでいたけれど、それを見られたのは初めて。若かった。メリル・ストリープは、ただ声が大きくてがさつなおばさんのようでも、楽しそうに食べたり料理したりしている姿がなんだかかわいく見えてきたりする。頻繁に煙草を吸っている演出が良い。エイミー・アダムスは『サンシャイン・クリーニング』やこの作品のような、不満や悩みをかかえる普通の女性の役が似合う。2人の夫が、それぞれ魅力的。料理がおいしそうで、ル・クルーゼの鍋の色も鮮やか。珍しい色のものについ目がいってしまうけれど、料理がおいしそうに見えるのは、やはりオレンジのココットかという気がしてくる。お調子者なので、パールのネックレスをして、ル・クルーゼの鍋で料理がしたくなった。

ジュリー&ジュリア』Julie and JuLia My Year of Cooking Dangerously (ジュリー・パウエル Julie Powell 富永和子・訳 ハヤカワ イソラ文庫)を読み終えた。クラシックなフランス料理を現代の普通の家庭で作る苦労やジュリー自身の魅力は、やはり本の方で。笑ったり、共感したり、ぞっとしたり、自分に重ねて少しおセンチになったり。面白い文章を書く人で『Cleaving: A Story of Marriage, Meat, and Obsession 』というこの次の本も気になる。
引越す時に部屋を選んでいる時間的余裕がなかったので一口のガスコンロしかないリカちゃんキッチンのような小さいキッチンの部屋に住んでいた頃、(広い部屋に一人で住んでいた時に買ってしまった)一人暮らしには不釣り合いな大きなテーブルを入れたらゲストとすれ違うのもやっとのダイニングキッチンで、急に思い立ってフランスのお菓子の勉強を始めて、周囲に呆れられつつコンフィズリーまで作っていた自分をつい思い出してしまう。お菓子作りといえば、これまでマフィンだとかの焼きっ放しの簡単な手間のさほどかからないものしか作ってこなかったことを、始めてみてから思い出し、シュークリームなんて、皮を焼いてからクリームを2種類も作ってさらにそれを詰めて、エクレアなんて、さらに皮のうえにチョコレートを塗らなければならないし、気が遠くなりつつ、それでも意地になって作っていたわ。でも、自分で作ったものは材料のせいなのか驚くほどおいしかった。それから、サイトを持っていたときの日記にデートでどこに行ったかなど書いたら、後日「ネットに書くなら会わない」といわれたことなども。その人が読んでいるとは思わなかったので、今思い返すと、あたしのことを気にして読んでくれていたとは光栄だったのかしらん。料理がうまくいかなくて、夫に当たり散らす様子も、ときどき自分のことのようで、いたたまれなくなった。

映画にも出てくるアマンダ・ヘッサーは、以前写真で見たよりも美人、そしてフードライターという職業と彼女が書いていた文章からは想像できないくらいに華奢だった(全身は映っていなかった気がするけれど)。ジェフリー・スタインガーテンと一緒に食事したりしているのに、本当に「どこに食べ物が入るのか理解できない」くらい。それから思うのは、アマンダもジュリーもジュリアも、皆、パートナーがよくできた素敵な人。
ジュリー&ジュリア (イソラ文庫)