見た映画

久しぶりにフランス映画らしい映画を見たような気がした。そして、若い。とても60歳をこえた人の撮った作品とは思えないような、若々しさ。ルイ・ガレルの顔や体格、雰囲気が好み。いつまでも終わって欲しくないくらい心地良い。最後に流れた曲の声がとても良くて、ジャン=ルイ・オベール Jean-Louis Aubertという人を憶えておく。いろいろ聴きたい。フィリップ・ガレルの作品は川崎長太郎映画、という人から『抹香町』を手渡されたので、近々読むつもり。

舞台に疎いこともあって、クリントが監督したミュージカルらしい、ということしか知らずに見に行った。曲はもちろん聴いた事があっても、フォー・シーズンズというバンドも知らなかった。タモリ倶楽部の曲を、あんな若い人が作っていたということにも驚く。ヒット曲を連発しても、生み出す力の枯れないところが、すごい。間近で見たら怖くて泣いてしまいそうなクリストファー・ウォーケンが、とりあえず観客の前では一人も殺していなかった。彼に最後でしか踊らせていないのも贅沢かしら。最後は夢のように美しくて、ぽうっとしてしまう。楽しい!! 何度も見たい。気付くと、つい歌っている。

健さんが亡くなった事は外出先で聞かされた。BBCのニュースに「Known as the "Clint Eastwood" of Japan」とあって、そんなふうに意識したことはあまり無かったような気もするけれど、そういわれれば、なんとなく納得。どちらもアンチヒーローだったし。小さい頃、クリントを真似して無表情・無口であろうとしていたことなど思い出した。

この監督、こんなタイトルの映画を作っておきながら、性的な事に興味が無いでしょう? 音楽の使い方と結末は、アルジェントなどの時代のスプラッタな映画をかなり意識しているように見える。ゴブリンとは違うのだけれど。そういう映画に詳しくないし記憶もいい加減なので、アルジェントよりもっと良い例えがあるような気がしつつ、浮かばない。結末は、教科書通りというか、皆が想像しそうなものをそのまま見せてくれたような。少し退屈したけれど、シャルロット・ゲンズブールはかっこいい。クリスチャン・スレイターに、いかれぽんちな役をやらせなかったのは良かった。彼は無口で地味な役もできる人だし、アクションもサスペンスも無い映画で見たい、と改めて思った。


そういえば、夏までに『グランド・ブダペスト・ホテル』(The Grand Budapest Hotel)と『リアリティのダンス』(La danza de la realidad The Dance of Reality)も見ていた。『グランド・ブダペスト・ホテル』を見た時は、贅沢で楽しいとはいえ、詰め込み過ぎというのか、単純にエイドリアン・ブロディの細い脛を堪能できた『ダージリン急行』の方が良かったかなあという感想だったけれど、先日アンコール上映の予告編を見たら、また見たくなってしまった。『リアリティのダンス』は、大満足。早く本も読みたい。