『回想 回転扉の三島由紀夫』

『回想 回転扉の三島由紀夫』(堂本正樹 文春新書)を読んだ。以前、今東光の『定本 稚児』を読んだ時に、跋文後記で、三島由紀夫が自分の作品を引用したのにそれを明記していないというのが気になり、三島由紀夫が「弘児聖教秘伝」を見たように書いたという作品って何なんだろうといっていたら(大きい声ではいえないけれど、三島の作品ってたぶん「黒蜥蜴」くらいしか読んでいない)、知人にそれは「禁色」であり、この本を読むべしと教えていただいたので。もっと早く読みたかったのに、「家の中のどこかにあるはず」といわれて買うのをがまんしており、部屋を片付けていたときに、偶然やっと見つけた。とても楽しく読む。今東光が見たのは比叡山文庫の『弘児聖教秘伝』、三島が見たのは醍醐寺の『稚児乃草子』、と違うものなのだということがわかった。よく知らないのでなんともいえないけれど、それらが似たような内容のものだからなのか、今東光に「三島由紀夫が作中で『弘児聖教秘伝』を見て書いたように述べている」といった人が思い違いをしたのかしらん。今東光はそれを書いた時点では『禁色』を知らないようだったし。でも、三島が今東光に謝っていたということは、やっぱり引用はされたのかもしれない。次は『禁色』を読みたい。
そういえば、中井英夫タスマニア旅行記に、三島由紀夫有袋類になりたかったのではないか、と書かれていて、げっらげら笑ったような覚えがあるのだけれど、あれは記憶違いかしら。
回想 回転扉の三島由紀夫 (文春新書)