『ヘイター』

『ヘイター』Sala samobójców. Hejter 英The Hater(ヤン・コマサ Jan Komasa)

邦題は『ヘイター』で良いのかな。Jakub Gierszał主演作『Sala Samobójców』(Suicide Room)の続編って事なのかとずっと気になっていた作品。

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こちらも気の滅入る、胸にどろっとどす黒いものが占めるような、後味も良くないいやーな話なものの、良かった。単体で十分に楽しめる作品なのだけれど、前作を見ている方が色々と関連を見出してより楽しめる。「楽しめる」という言葉が適切なのか、微妙な映画だけれど。前作のネットのいじめで引きこもる少年の話から、随分スケールが大きくなっていた。

 監督のインタビューなどを読んでいないので、2作品の関係や、これが前作に対してどういった位置付けの作品なのか知らないけれど、前作を見た人は、どうしても繋がりを意識してしまうはず。ネットにおける憎悪、悪意、現実の社会との繋がり、影響というようなテーマも一緒だし、Jakubの母親役を演じていたAgata Kuleszaが仕事の分野が違うもののこちらでもやり手の経営者、しかもシングルマザーで(前作のラストで夫と別れていた気がする)、Beataという役名が同じ。部屋にあった写真に写っている息子(それも亡くしている? らしい)がJakubっぽい。止めて何度か見たけれど『Suicide Room』の頃のJakubよりもっと成長した姿みたいなの、なんだかすごく怖くて、あれは何なのだろう(気のせいか?)。前作は日本的なモチーフがちらほら見られたけれど、こちらでは「孫子の兵法から学べ」と主人公が言われたりしていた。ゲームの世界でやりとりするのもあるし、他にも前作を踏襲した表現がいくつも見られて、前作を見ている人はニヤニヤしてしまいそう。

 こちらの本筋に戻すと、主人公は仕事として、ネットで虚偽の貶めるコメントを大量に捏造したり、選挙の候補者の妨害のために移民に国が乗っ取られるという不安や憎悪を煽ったりして、それがエスカレートしていく話。多くの国で問題となっている事が描かれていて、日本にも当てはまるし、見ていてつらい。あんな気の休まらない職場はいやだ。

 主人公を演じているMaciej Musiałowskiが良かった。色々な面があって嘘もつく人間を自然な感じに見せていて、Jakubもそうだけど、セリフが無くても細かい表情で表現するのが上手い気がする。今後も出演する作品を追っていきたい。

 ヤン・コマサの『Boże Ciało』(英 Corpus Christi)もすごく楽しみになってきた。

 

14日追記

書き忘れていたけれど、netflixで。今月末からの配信だと思っていたのに、ログインしたらトップに出てきたので予定が早まったのかと嬉しくてそのまま見た。その後また消えてしまったみたい。何だったのかしら